わたしのルームメイト
大野みずき
二〇一四年九月から、上海の復旦大学に一年間留学しました。留学を終えて帰国してから友人に会うと、必ず「留学どうだった?」と聞かれます。それに対して何度も適当に答えてきたのですが、帰国して五ヶ月たった今でも、いまだに自分の中でふさわしい答えを見つけることができずにいます。ただ、一年間をまとめて語ろうとすると上手くいかないということは友人との会話で学んでいるので、ここでは最も印象深い、ルームメイトについて書かせて頂こうと思います。
色々悩んだ一年でしたが、そんな中でもルームメイトという存在のおかげで、楽しい思い出を作ることが出来ました。姉妹のような友人のような、とても大切な存在です。ただ、最初からすぐに親しくなれたわけではありませんでした。私の住んでいた寮は一フロアに四人部屋が二つあり、私の部屋は、オランダ華僑のウェンリー、ニュージーランド出身で中国語ペラペラのアラーナ、中国語はほとんど話せないドイツ人のマディー、そして私の計四人が一緒に住んでいました。そして同じ階のもう一つの部屋にも、四人の女の子が住んでいました。みんな初対面ということもあり、初めのころは、その八人+何人かで夜ご飯を食べたり、出かけたりすることが多くありました。しかし私は最初の何回かは一緒に行動したものの、私が大人数で行動することが苦手だということ、会話が全て英語だということ、語学生のみんなと本科生の私の生活リズムがあまり合わないことを理由に、しばらくするとその子たちの誘いを断るようになってしまいました。そうして何度も誘いを断ってだんだんと距離が出来てしまうと、自分から距離を置いたにも関わらずなんとなく疎外感を感じてしまい、そうこうしているうちに前期が終わって八人のうち五人が帰国してしまいました。テストも終わって、春節を上海でのんびり過ごしながらルームメイトとの関係について考えてみたときにやっと、自分の方が壁を作っていたのだということに気が付きました。また、中国語がまったく話せなかった子たちが全員帰国していたということもあり、後期は中国語で自分からガンガン話しかけようと決めました。後期が始まって、部屋の住人はウェンリーとアラーナと私だけになり、中国語で自分から話しかけてみたところ、二人とも私の想像以上に喜んでくれました。その後二人の共通の友人も加えて、夜ご飯は毎日一緒に食べに行くようになり、休みの日は少し遠出したり、リビングで団欒したり、私の思い出はルームメイト一色になりました。ウェンリーがどこからかもらってきたお酒をリビングで飲みながら人生について話したこと、食堂で白玉を食べながらその日あった出来事を話したこと、マーラータンを食べに行った帰りにアイスを食べ歩きながら恋愛について話したこと、そういうふとした瞬間が、とても大切な思い出になりました。
今振り返ってみると、前期は留学生活というものに対して肩の力が入りすぎていたなと思います。留学していると出来るだけ多くの人と出会い、出会う人みんなと友達にならなければいけないような気がしたり、何か目に見える成果を出さなければいけないような気がしたり、とにかく自分を見失うようなことが多かったです。留学というものの典型的な「成功例」に振り回されていたのだなと思います。ルームメイトがいたからこそ、色々な悩みに向き合いながらも、最終的には自分らしい留学生活を送ることができました。また、そんなルームメイトの他にも、留学を決意させてくれた家族や先生方、留学中ずっと支えてくれていた友人など、多くの人々に感謝したいです。ありがとうございました。